Webアプリ開発の進化とBlazorの位置づけ|ASP.NET×Blazor入門 1.1

1.1 Webアプリ開発の進化とBlazorの位置づけ

Webアプリケーションの開発現場は、この10年で大きく様変わりしました。
サーバー側のAPIとクライアント側のUIが分離され、バックエンドとフロントエンドはそれぞれ異なる技術・異なる言語で構築されるのが常識となっています。

たとえば、ロジックはC#とASP.NETで構築し、UIはReactやVueで実装、TypeScriptとJavaScriptを行き来する――そんな日常が今の開発スタイルです。
技術は進歩し、役割分担は洗練されましたが、こう思ったことはありませんか?

「UIもサーバーも、C#だけで完結できたら、どれほどシンプルだろう」

その発想を現実のものとしたのが、Blazorです。

Blazorとは ― C#で構築するモダンWebフロントエンド

Blazorは、Microsoftが提供するASP.NET Coreの一部として登場したWeb UIフレームワークです。最大の特徴は、これまでJavaScriptが担ってきたブラウザ上のUI処理をC#で書けることにあります。

Blazorには2つの実行モードがあり、それぞれ異なるアーキテクチャを持っています:

  • Blazor Server:UIロジックをサーバーで実行し、SignalRでブラウザと双方向通信するリアルタイム更新型
  • Blazor WebAssembly:C#のコードをWebAssemblyに変換して、ブラウザ上で直接実行する完全クライアント型

どちらの方式も一長一短がありますが、共通する利点は「C#とRazorだけでWebアプリ全体を構築できる」という点です。

なぜ、いまBlazorなのか?

ReactやVueなどのフロントエンド技術は成熟し、Web開発の主流となっています。
しかし、C#に慣れた開発者にとって、JavaScriptエコシステムへの参入は依然として高いハードルです。

学習コストを抑えたい、少人数で社内システムを完結させたい、サーバーからUIまでを一気通貫で開発したい――そんなニーズに、Blazorは自然な解決策を提供します。

Blazorが実現するのは、フロントエンド開発の“民主化”とも言えるアプローチです。C#を軸にした統一的な開発体験が、モダンWeb開発に新たな可能性をもたらします。

次のセクション 「Blazorとは?サーバー vs WASM 比較」では、Blazor ServerとBlazor WebAssemblyという2つの実行モデルの違いに焦点を当て、それぞれの開発体験と適用シナリオを具体的に見ていきましょう。

2025-04-03

下田 昌平

開発に関するインプットをアウトプットしています。