Swiftマスター:iPhoneアプリ開発のすべて

はじめに

スマートフォンアプリ市場は、今や世界全体で数十兆円規模の経済圏を築いています。
その中でも、iPhoneアプリ(iOSアプリ)は収益性の高い市場として圧倒的な存在感を持っています。
例えば、2023年のデータによれば、App Storeの年間売上はApple単体で1,200億ドル(約18兆円)を超え、AndroidのGoogle Playよりもアプリ単価が高く、開発者にとって収益を生み出しやすい環境が整っています。

起業家、個人開発者、フリーランス、スタートアップ、企業の新規事業担当──
どんな立場であれ、「アプリで何かを実現したい」「ビジネスを生み出したい」と考えたとき、iPhoneアプリの開発スキルは非常に大きな武器となります。

ただし、自由にアイデアを形にしていくためには、まず開発の基礎をしっかりと身につけることが不可欠です。
本書は、そのための道筋を体系的に示し、あなたがアプリ開発を“現実の力”に変えていくための伴走者となる一冊です。

iPhoneアプリを作るにはSwiftしかないのか?

まず、多くの人が気になる疑問があります。
「iPhoneアプリを作るには、Swiftしか選択肢がないのか?」
答えは、「必ずしもそうではありません」です。

Appleが公式に提供している開発言語はSwiftObjective-Cですが、Objective-Cは現在ではレガシーな扱いです。
他にも、React Native、Flutter、Unityなどのクロスプラットフォーム開発技術も存在します。

それでも本書がSwiftにフォーカスする理由は、次の通りです:

  • Appleの公式開発環境(Xcode)との連携が強い
  • 最新のiOS機能との統合がしやすい
  • App Storeとの親和性が高く、審査に通りやすい
  • 将来的にメンテナンスしやすく、現場での採用率が高い

Swiftは、現在におけるiPhoneアプリ開発の最も安定した正攻法です。

Swiftは初心者にとって優しいのか?

Swiftは、Appleが「誰にでもアプリが作れる時代」を目指して設計したモダンな言語です。
読みやすく、安全で、学びやすい。それがSwiftの魅力です。

また、UI構築にはSwiftUIという最新の仕組みが使えます。
少ないコードで洗練されたUIを作れるため、学習者にとって大きな利点があります。

この本の目的と構成

本書は、「Swiftって何?」というところから、App Storeで自作アプリを公開するところまでを、段階的に学べる実践的な開発書です。

読者対象:

  • 初めてアプリ開発を学ぶ方
  • SwiftとXcodeの基本をしっかり学びたい方
  • UI設計、データ保存、アーキテクチャ設計まで学びたい方
  • 将来iOSエンジニアとして仕事に活かしたい方

目次

  1. はじめに
  2. 第0章 iOSアプリ開発の準備
    • 0.1 SwiftとiOSの開発環境を整える
    • 0.2 Apple Developer Programとは
    • 0.3 Xcodeプロジェクトの構造を理解する
    • 0.4 開発フローを俯瞰する
  3. 第1章 Swiftの基本文法を完全に理解する
    • 1.1 定数・変数とデータ型
    • 1.2 演算子と制御構文
    • 1.3 関数とクロージャの基本
    • 1.4 クラス、構造体、プロトコル
    • 1.5 Optionalと安全なコード
    • 1.6 エラー処理とガード文
  4. 第2章 XcodeとStoryboard/SwiftUIの使い方
    • 2.1 Xcodeの基本操作と構造
    • 2.2 シミュレータとデバッグ
    • 2.3 StoryboardとAutoLayout
    • 2.4 SwiftUIプロジェクトの作成と構成
    • 2.5 実機テストとビルド設定
  5. 第3章 SwiftUI入門:モダンなUI構築を体験する
    • 3.1 ViewとModifierの基本
    • 3.2 状態管理(@State, @Binding)
    • 3.3 リストとForEach
    • 3.4 NavigationViewとTabView
    • 3.5 フォーム入力とバリデーション
  6. 第4章 UIKit応用:Storyboardによる実践的UI
    • 4.1 ViewControllerの基本構造
    • 4.2 Segueと画面遷移
    • 4.3 TableViewの表示と操作
    • 4.4 CollectionViewとカスタムセル
    • 4.5 ジェスチャとアニメーション
  7. 第5章 データを扱う:Modelと通信
    • 5.1 JSONとCodable
    • 5.2 API通信とURLSession
    • 5.3 非同期処理(async/await)
    • 5.4 CoreDataによるローカル保存
    • 5.5 UserDefaultsとKeychain
  8. 第6章 アーキテクチャ設計とモジュール分割
    • 6.1 MVCとMVVMの基礎理解
    • 6.2 データの流れを可視化する
    • 6.3 シングルトンと依存性注入
    • 6.4 クリーンアーキテクチャ入門
  9. 第7章 実践プロジェクト:ToDoアプリを作る
    • 7.1 要件定義と画面設計
    • 7.2 UIの構築とナビゲーション
    • 7.3 データモデルと保存処理
    • 7.4 タスク編集と削除
    • 7.5 デバッグと改善
  10. 第8章 より高度な機能と応用例
    • 8.1 通知とUNUserNotificationCenter
    • 8.2 カメラ・写真・位置情報
    • 8.3 アプリ内課金と広告
    • 8.4 ダークモードとアクセシビリティ
    • 8.5 外部ライブラリの導入(SPM/CocoaPods)
  11. 第9章 App Store公開までのステップ
    • 9.1 Apple Developer Programへの登録
    • 9.2 アイコン・スプラッシュ・設定
    • 9.3 TestFlightによるベータ配信
    • 9.4 App Store Connectと申請プロセス
    • 9.5 審査・公開・アップデート戦略
  12. 第10章 プロの現場で使われる技術とノウハウ
    • 10.1 Gitとチーム開発
    • 10.2 Crashlyticsとエラー管理
    • 10.3 コードレビューと品質管理
    • 10.4 SwiftLintとCI/CDの導入
  13. 付録
    • A. よく使うSwiftコードスニペット集
    • B. iOS開発用語ミニ辞典
    • C. 学習・参照に役立つ外部リンク集
2025-06-01

下田 昌平

開発に関するインプットをアウトプットしています。