0.4 Pythonの仮想環境とpipの使い方を丁寧に解説
0.4-1 Pythonのインストール(Windows / macOS / Linux)
Pythonでの開発を始めるには、まずPython本体をコンピュータにインストールする必要があります。
多くのOSでは標準でPythonが付属していますが、バージョンが古いこともあるため、明示的に最新版をインストールすることをおすすめします。
このセクションでは、Windows / macOS / Linux それぞれの環境におけるPythonのインストール手順を丁寧に説明します。
事前確認:どのPythonを使う?
本書では基本的に Python 3.11 以降 を使用して解説します。
Python 2系はすでに公式サポートが終了しているため、学習や開発に使うことはおすすめしません。
Windowsの場合
- 公式サイト(python.org)から Windows用インストーラをダウンロードします。
- インストーラを起動したら、「Add Python to PATH」にチェックを入れるのを忘れずに。
その後、「Install Now」をクリック。 - インストール完了後、コマンドプロンプトを開いて以下を入力して確認します:
python --version例:
Python 3.11.5のように表示されれば成功です。
macOSの場合
macOSにも標準でPythonが付属していますが、バージョンが古いことが多いため、Homebrewを使って最新版を導入するのが一般的です。
- まず、Homebrewが入っていない場合は公式サイト(https://brew.sh)の手順でインストールしてください。
- ターミナルで以下を実行します:
brew install python - インストール後、以下のコマンドで確認:
python3 --version例:
Python 3.11.5などと表示されればOKです。
Linux(Ubuntu)系の場合
多くのディストリビューションではPythonが標準搭載されていますが、最新版を使いたい場合は以下の手順で追加します。
- まず、必要なビルドツールをインストール:
sudo apt update
sudo apt install -y software-properties-common
- PythonのPPAを追加し、最新版をインストール:
sudo add-apt-repository ppa:deadsnakes/ppa
sudo apt update
sudo apt install -y python3.11
- 確認:
python3.11 --version
インストール後の確認方法(共通)
ターミナルやコマンドプロンプトで以下のように入力し、バージョンが表示されることを確認しましょう。
python --version
または
python3 --version
ここまででPython本体の準備は完了です。次のセクションでは、実際にPythonを書くためのエディタを整えていきます。 特に人気が高く、初心者〜中級者にもおすすめできる「VSCode」を中心に紹介します。
0.4-2 エディタの選定とセットアップ(VSCode中心)
Pythonを効率的に学ぶためには、信頼できるエディタ(コードを書くためのソフト)を用意することが重要です。
現在、多くのPython開発者に支持されているエディタが Visual Studio Code(VSCode) です。 無料で軽量、カスタマイズ性が高く、Pythonとの相性も抜群。初心者からプロまで幅広く使われています。
なぜVSCodeなのか?
- Microsoft製で安心・無料・軽量
- Python用の拡張機能が充実
- Jupyter Notebookも使える
- 補完・デバッグ・仮想環境対応などの機能が標準で強力
以下では、VSCodeの導入手順と、Pythonを快適に書くための拡張機能について紹介します。
VSCodeのインストール手順
- VSCode公式サイトにアクセスし、お使いのOSに合ったインストーラをダウンロードします。
- ダウンロードしたファイルを実行し、画面の指示に従ってインストールしてください。
- インストール完了後、VSCodeを起動します。
Python拡張機能のインストール
VSCodeを開いたら、まず最初に 「Python拡張機能」 を追加しましょう。
- 左側のメニューで「拡張機能」(四角いアイコン)をクリック
- 検索窓に
Pythonと入力 - Microsoft公式の「Python」拡張機能(数千万ダウンロード)をインストール
この拡張機能を入れることで、以下のような機能が追加されます:
- 文法のハイライトと自動補完
- 仮想環境の自動検出と切り替え
- コードのフォーマット(PEP8対応)
- デバッガの統合
- Jupyter Notebookのサポート
Pythonファイルを作ってみよう
拡張機能のインストールが終わったら、実際にPythonファイルを作ってみましょう。
- 任意のフォルダを作成(例:
my_python_test) - そのフォルダをVSCodeで開く
- 新規ファイルを作成 →
hello.pyなどの名前をつける - 以下のようなコードを書いてみましょう:
print("Hello, Python!")
画面右上の「▶」ボタン(Run)や、ターミナル(Ctrl+`)から実行して、結果を確認してみてください。
これで準備完了
VSCodeの基本セットアップが完了しました。これであなたは、快適でパワフルなPython開発環境を手に入れたことになります。
次のセクションでは、Jupyter Notebookの導入と、Python学習への活用法について紹介していきます。 実験的にコードを試したい場面や、データ分析を行う際に非常に役立つツールです。
0.4-3 Jupyter Notebookの導入と活用
Pythonを学ぶうえで、「手を動かしながら学ぶ」ことは非常に重要です。
その際に大いに役立つのが Jupyter Notebook(ジュピター・ノートブック) というツールです。
Notebookは、Webブラウザ上でPythonコードを実行しながら、その場で結果を確認したり、メモを書いたり、グラフを表示したりできる、非常に便利な学習・開発環境です。 特にデータ分析、機械学習、教育用途などで広く使われています。
Jupyter Notebookの特徴
- コードをセル単位で実行できる(エラー時のリトライが簡単)
- Markdown形式でメモ・説明を記述できる(読み返しやすい)
- グラフや画像をその場に表示できる(可視化に強い)
- データ分析やアルゴリズム学習に最適
通常のPythonファイル(.py)では得られない、「学びやすさ」「試しやすさ」がJupyterの最大の魅力です。
Jupyter Notebookのインストール方法
Jupyter Notebookは、以下のいずれかの方法で導入できます:
方法①:VSCodeの拡張機能を使う(推奨)
- VSCodeで「拡張機能」から Jupyter を検索し、インストール
- Python拡張機能と連携して、.ipynb ファイルをそのまま編集可能
- ファイル → 新規作成 → 「Jupyter Notebook」を選択
※ VSCode上でNotebookを使えるので、エディタを変えずに学習を続けられます。
方法②:コマンドラインで起動する
- ターミナルまたはコマンドプロンプトで以下を実行:
pip install notebook
- インストール完了後、以下で起動:
jupyter notebook
- ブラウザが開き、Notebookの管理画面が表示されます。
※ この方法では、ブラウザ上でNotebookを操作できます。VSCodeより柔軟に動作することもあります。
Notebookの基本操作
Notebookでは、「セル」という単位でコードやメモを記述していきます。
- Shift + Enter:選択中のセルを実行
- Esc → B:下に新しいセルを追加
- セルの種類は「コード」または「Markdown(説明文)」を選択可
たとえば、以下のようなセルを作ることができます:
# コードセル
message = "Hello, Jupyter!"
print(message)
※ Markdownセル
### グラフの表示例
以下に棒グラフを表示します。
グラフや画像の表示も簡単
Jupyterはグラフ描画に強く、たとえば matplotlib を使えば次のようにして可視化が可能です:
import matplotlib.pyplot as plt
x = [1, 2, 3, 4]
y = [10, 20, 25, 30]
plt.plot(x, y)
plt.title("サンプルグラフ")
plt.show()
結果はコードのすぐ下に描画され、直感的に分析ができます。
学習・実験・共有にも最適
Jupyter Notebookは、学習用の教材を作成したり、データ分析レポートを共有したりする用途にも非常に適しています。 .ipynbファイルはそのまま他人に渡しても、コードと実行結果がセットで伝わります。
本書でも、後半のデータ分析・機械学習の章ではNotebook形式のコード例を多く扱います。 そのため、今のうちに慣れておくと、今後の学習がぐっとスムーズになります。
次のセクションでは、Python開発に欠かせない仮想環境とパッケージ管理の考え方と使い方について学んでいきましょう。
0.4-4 仮想環境とパッケージ管理(venv / pip)
Pythonで本格的に開発を始める前に、ぜひ知っておいてほしい重要な概念があります。
それが 仮想環境(virtual environment) と パッケージ管理 です。
「ちょっと難しそう…」と思うかもしれませんが、心配はいりません。 初心者でも実践できるよう、順を追ってわかりやすく説明します。
なぜ仮想環境が必要なのか?
Pythonには、他人が作った便利なライブラリ(外部パッケージ)をインストールして使う文化があります。 例えば、データ分析をするなら pandas や matplotlib を、Webアプリを作るなら Flask や Django を使うことになります。
ここで問題になるのが、「別のプロジェクトでは別のバージョンを使いたい」という状況です。 すべてを1つの環境にインストールしてしまうと、ライブラリ同士のバージョン衝突が起きてしまい、思わぬ不具合につながります。
そこで登場するのが、仮想環境(virtual environment) という仕組みです。 これは、Pythonのライブラリをプロジェクトごとに「隔離」して管理できる機能です。
仮想環境を作る:venvの使い方
Pythonには、標準で venv という仮想環境管理ツールが含まれています。以下の手順で使うことができます。
① 仮想環境の作成
python -m venv venv
これで、現在のフォルダ内に venv/ というディレクトリが作られます(名前は自由ですが「venv」が一般的)。
② 仮想環境の有効化
環境によってコマンドが異なります:
- Windows:
venv\Scripts\activate
- macOS / Linux:
source venv/bin/activate
有効化されると、ターミナルの先頭に (venv) という表示がつき、仮想環境の中に入ったことがわかります。
③ 仮想環境の終了
deactivate
このコマンドで元のグローバル環境に戻ることができます。
パッケージ管理ツール pip の使い方
Pythonのパッケージは pip というツールを使ってインストール・管理します。 仮想環境内でpipを使えば、その環境だけにパッケージがインストールされます。
よく使うpipのコマンド
- パッケージのインストール:
pip install requests
- インストール済みパッケージの一覧:
pip list
- バージョン確認:
pip show numpy
- 不要になったパッケージのアンインストール:
pip uninstall flask
開発に便利な「requirements.txt」
プロジェクトで使っているパッケージの一覧をファイルに書き出すと、他の人が環境を再現しやすくなります。 以下のコマンドで、現在の仮想環境のパッケージ一覧を出力できます:
pip freeze > requirements.txt
別の環境でこのファイルを使ってパッケージを一括インストールするには、以下のようにします:
pip install -r requirements.txt
チーム開発やGitと組み合わせるときには、このファイルを必ず用意しておくと安心です。
よくあるトラブルと注意点
- 仮想環境に入らずに
pip installをすると、システム全体にインストールされてしまう - VSCodeを使う場合は、仮想環境を作成後に再起動すると自動検出されやすい
- プロジェクトごとに 必ず仮想環境を分けることを習慣にする
仮想環境とpipの使い方をマスターすることで、プロジェクトの管理と再現性が飛躍的に向上します。
初学者のうちからこの習慣を身につけておくと、後々トラブルを防げるだけでなく、チーム開発でもスムーズに連携できるようになります。
これで開発環境の準備は完了です。次章からは、いよいよPythonの基本文法に入っていきます。
まずは変数・データ型など、プログラムの基礎となる「ことば」を覚えていきましょう。
下田 昌平
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